2008.10.11

2008 SLOW TRIP Vol.028「 久高島 : THE GOD ISLAND Part.2」

元気に走り回る宿の子供たちの足音に起こされた

「神の島」での朝

2008年11月1日

2008年沖縄 「本当の唄を探して」篇  第2話

沖縄本島の東に位置する周囲約8kmの小さな島でのお話 #2

一晩中開けっ放しだったベランダ、網戸も開け庭をのぞくと

昨日すでに仲良しになっていたルカリオが「こっちへおいでよ」と僕を呼んでくれた

ルカリオの全身を撫でながら

ちょっぴり遅く起きた事を反省し

「もったいないよねぇ」とルカリオに告白した

さぁ、ゆっくりと久高島に触れさせていただこうね

庭先で咲く彩り豊かな花々にはたくさんの蝶が集まっていた

シロオビアゲハは僕の目の前で羽を休めてくれることなく蜜を吸っていた

こんな感じでたくさんのカバマダラが集まってるから楽しくて仕方がない

マダラチョウ科の蝶は優雅で美しいなぁ

しばし見とれてしまう

蝶だけで1日退屈しないですみそうだった

そこへネコが通りかかり

木の上にはリュウキュウキジバト

自宅の近所で見るキジバトとの区別がつかないのだけれど

アカバナー(ブッソウゲ、ハイビスカス) の生垣が南国を感じさせ、豊かな気持ちになる

オバーが畑にやってきたので挨拶した

「おはようござます」

「何を蒔いているんですか?」

オバー「あずきね」

五穀発祥の地と呼ばれる久高島で豆を育てるオバーが伝統的で力強く見えた

畑の端っこにはパパイヤの木

沖縄の人たちは青いうちのパパイヤを野菜としてチャンプルーなどの炒め物にして食べることが多い

漁港まで来た。

よく見ると

ネコが一匹黄昏れてた

足下ではマダラバッタが跳ね

今の所、人と出会うより自然の生き物と出会う方が多いなぁ

僕は島の南西側を歩きイラブー(エラブウミヘビ)が産卵に訪れる「いらぶーがま」と呼ばれる場所を探した

集落を少し離れたらそこは自然

「おじゃまします、ここを通らせてくださいね」

何故かこんな風に頭で話してた

どちらだろう?

左へ行ってみよう

ヤシガニの好物のアダンもたくさん自生していた

ノニ(ヤエヤマアオキ)も自生していた

健康ブームでノニ・ジュースなんかがもてはやされてはいるけれど

その有効性はまだ立証されていないらしい

海が見えた

このあたりが「いらぶーがま」なんだろうな

日没から夜にかけて産卵のため岩場に訪れたイラブーを手づかみで捕まえる猟場。



久高島ではイラブーは神様の贈り物

イラブーの採取権があるのが島の神人(かみんちゅう)と呼ばれるノロの家系。

この「いらぶーがま」は久高ノロの猟場。

しかしながら久高ノロの不在で漁は10年間行われることがなかった。

2005年に村頭代行と言う形をとり伝統の漁を復活させたと聞く

この島をより神秘的なベールで包む成巫式

12年に1度行われる久高島伝統の祭事「イザイホー」

後継者、該当者不足で1978年以降途絶えている


だけれど過疎などに悲観的になっているようには僕には決して写らなかった。

それは伝統行事が途絶ようと

健康や食事そういった人が生きるために最低限必要なことに対する

神への祈りと感謝の心がしっかりと島民全員に息づいているからだ。

まだ僅かな島民とのふれあいでしかないのにこれはすでに感じられた事実だ

他から来た僕みたいな人間に対して原点を見つめなおさせるほどに強烈な事実だ

久高島にもう少しふれてみたいと思った

三叉路の右側へ歩いてみた

両脇ギンネムだらけ

この外来種のギンネムの繁殖力はものすごいらしい

お茶になる以外には役に立たないものなのかな?

このあたりも「いらぶーがま」なのかな

まさに磯にイソヒヨドリがいた

そのまま西の海沿いを歩き続けると

とてもハッピーな建物を発見した

玄関まで近づくと

「気まぐれカフェ あらんぱ ??」

「丁度いいや、アイスコーヒーが飲みたいな」

扉を開け中に入った

酋長「あら、けんちゃん」

「んっ!? 酋長???」

昨夜の酋長がくつろいでいて驚いた!

ここは酋長の家だったようだ(笑)

しかしなんとも楽しいカフェ(家)で自然と顔が綻んだ

酋長のCDが欲しかったので偶然にしても可笑しかった。


酋長と

昨夜感じた事を話したり、

現代の使い捨てにされる音楽のことを話したり

僕の暮らす仙台の事、久高島の事、いろいろお話した。

KEN「酋長、どうして昨夜体調すぐれないと言ったのに突然来てくれたんですか?」

酋長「行かなければいけない予感してさぁ」

そしてCDを譲ってもらった。

うれしいことに「健ちゃんA(へ)」とサインまでしてくれた。


そして木の破片に書かれたメニューを見て注文しようとすると

酋長が手元のひもをするすると操作した

すると僕の目の前に別のメニューが上からスッと現われた!

僕が驚いていると

酋長はしてやったという顔をして大きく笑っていた

なんとも楽しい人だ!!

僕も一緒になり大きく笑った

アイスコーヒーが身体に染み渡るほど美味しい

満たされていると

三線で歓迎してくれた

昨夜と同じ気持ちになり

生きることの喜怒哀楽、

先に生きた人たちの押しつけではない知恵、ユーモア

様々な音楽の表情が心に伝わった

酋長は裏庭から海へ出て海水を汲み、天然の塩づくりの名人だった

舐めさせてもらうと、しょっぱさの中に甘みがあって

天ぷらやステーキにまぶすと最高だなぁと思った

短い時間だったけれど

ここに書ききれないほどの会話をした気がする

いや迂闊に書きたくないほど

純粋な音楽の話をした

酋長は最後に言ってくれた

「仙台に心で歌うけんちゃんみたいな人がいて良かった」

僕は謙遜するのはやめた

それは失礼だもの

これからもそう言われるに恥じないようにしなければと引き締めるだけだ


「けんちゃんは久高島の入り方いいよ、島のまわりからゆっくりゆっくりとさ」

「とってもいいよ」


そして

「来年の旧正月の時にまた来なさい」

酋長は言ってくれた

 

とにかく酋長に出会えて良かった

あたりまえのことをあたりまえに大切にする

伝統を大切にする

神歌を伝承する

久高島のオバー、オジーのためだけにCDに録音する

久高の酋長、西銘徳夫さんに会えて本当に良かった





つづく

KENICHI KIKUCHI "2008 SLOW TRIP Vol.028"