2008.11.15

2008 SLOW TRIP Vol.030「 久高島 : THE GOD ISLAND Part.4」

僕は訪れる前から久高島の北部全体が聖域であるため

島の人と歩くのが最良であると考えていたんだ

2008年11月1日

2008年沖縄 「本当の唄を探して」篇  第4話

沖縄本島の東に位置する周囲約8kmの小さな島でのお話 #4

ガイドさんはとても優しそうな島の男性だった

「2時間しかありませんのでねちょっと急ぎましょうね」

「どこか行きたいところはありますか?」

僕は久高島の文化、伝統の感じられる場所をリクエストした後

「ヤシガニ見れますか?」

なんて言ってみた



ここで久高島の今について公式HPより
http://www.kudakajima.jp/ima/index.html



はじめに訪れたのは聖域「イシキ浜」

五穀発祥の地と言われる久高島

五穀(稲、麦、粟、豆、黍または稗)の種子が入った壷が漂着したとされる場所

この海の対岸に異界「ニラーハラー(ニライカナイ)」があると信じられている

ニライカナイとは「魂が生まれ、そして魂が帰る場所」

ニライカナイのある方向から太陽が登ってくると言う。

そして祈りは太陽が登ってくる時に行うと良いとされる

エネルギーがどんどん上がってくる時に祈るのが良いと。

そしてガイドさんは言った

「神様にお願いをしたら、願いっぱなしにせず必ず結ぶことが大切です」

僕はドキッとした。

波打ち際から300mほどまでリーフが広がっていて自然の防波堤が形成されていた

KEN「はっ! 島というのは本来人の手を加えることなく自然に完成するものなんですね!」

ガイドさん「そのとおりなんです! 港にテトラポットが置いてあったでしょ、、」

人が手を加えたことで弊害が起き、

それに対してまた人は手を加えようとしている現状にガイドさんは苦笑いをした

再び僕らはワゴン車に乗り込み北へ移動した

左手の島の中心部は緑に覆われているが

御嶽(神の鎮まる森)が点在する聖域であり

立ち入ることは禁じられている

よく見ると上の写真のように御嶽へ続く道がわかる

途中大きなな木に出くわした

「ガジュマルの木だ!!」

本当にキジムナーが住んでいそうな大木だった

気根を垂らして他の植物をも巻き込んで大きくなって行く様は圧巻だ

僕らを乗せたワゴン車は次第に島の最北部へ近づいて行く

クパ(ビロウ)の森が広がりこのあたりを「カベールムイ」と呼び

先祖様の魂が宿る聖域だと言う。

この道がとっても良くてね

この場所だけで写真集を作った写真家がいると聞いた

最北端の岬「はびゃーん (カベール)」まで来た

この場所はとても重要で琉球の創世神「アマミキヨ」が降り立った場所と言われる

同時に海の神様、竜宮神が鎮まる聖域

大漁祈願のお祭り「ヒータチ」はここで行われ、

上の写真の三カ所の崖の先端部に神女が座り祈りを捧げると言う

右手を行くと砂浜が見えた

この場所は島人たちも良く泳ぐ場所だとガイドさんが言った

最近では雑誌などで「パワースポット」であるとこの場所を取り上げられ

観光客が多く訪れ手を広げたりしているらしい

ふと訪れて心も清めないまま充電出来るはずもないだろうにとふたりで笑った

オカヤドカリ発見

あいにくの曇り空だけれど海の色はやっぱり綺麗だね

再びクパ(ビロウ)の森を抜けて次のポイントへ向う

僕の「ヤシガニが見たいです」の

リクエストに応えてくれて

夜行性のヤシガニが昼間寝ているポイントを紹介してくれた

こういった暗い窟の壁によくくっついているらしいのだけれど

今日はあいにくいなかった

貯水池を通り過ぎて島の北西側へ来たら

ノニの栽培農園があった

ワゴン車を止めて「ロマンスロード」と呼ばれる道を歩いた

縁結びの森、子宝に恵まれる岩があるらしいのでこの名前がついたらしい

海まで歩くと天然の芝が広がる気持ちのよい場所だった

海の向こう側に沖縄本島が見えた

琉球王朝時代、首里城から見て太陽の上る方向に久高島があった

太陽神を信仰する国王は「神の島」久高島へ

危険を冒してまで毎年訪れたという

崖の下にはポルコ・ロッソの基地みたいな入り江があるらしい

崖を見ると隆起珊瑚礁で出来た島だと言うのが良くわかった

よく見るとシャコ貝の化石なんかも見つかった

久高島で最も原始的で古来の文化思想を感じさせる「風葬」

沖縄文化論での岡本太郎さんと写った「ティラバンタ(葬所)」での一枚の写真が物議を醸したらしい

それ以降立ち入り禁止になっていると言う

上の写真の島の先端の方がティラ(ティダ、太陽)バンタ(断崖絶壁)の場所であるという

次に訪れたのは沖縄でも最高レベルの聖域「クボー御嶽」

琉球の七大御嶽の一つであると言う。

先祖の魂が宿り、何百年に渡り祈りの為だけに存在した聖域

祈りを行うのは女性の役目であるため男子禁制の場所

一時は外来者が入れた時期もあったが

やはり非常識な人間がおり、現在は手前の場所で立ち入り禁止となっている

霊感の強い人は近づくのもやめるべき場所。

僕には静かで優しげな森にしか感じられなかった


そもそも興味本位で聖域に近づくのはやめるべきだ

写真を撮っていい場所だけシャッターを切ったけれど

ダメな場所や絶対立ち入ってはいけない場所は僕にも強く感じた

島に立ち入るのを歓迎してくれているオバーやオジーの心を

裏切ってはいけない

これは信仰心や自分がどうこうといったそういったものではない

この島全体が神への祈りと感謝の気持ちで充満しているのだから

そして僕が見学したかった「タルガナー」と呼ばれるイラブーの薫製小屋がある「御殿庭(ウドゥンミャー)」に来た

久高殿とも呼ばれるイザイホーの舞台となった場所

久高島の始祖シラタルとタルガナーが天地の神々を祀ってこの島の繁栄を祈った場所

写真右側の中央の建物は「神アシャギ」イザイホーの時、神の世界とこの世の境界となる建物

その奥の森は聖域の為絶対に入ることはならない

ガイドさん「おっ! ラッキーですね、火入れしたばかりですよ!」

イラブーの薫製作業を終えたばかりの選ばれた三人の久高島の男たちも

「いいとき来たね、いいの撮れるよ」

許可を得てから裏手の薫製になる前の生きたイラブーを見せてもらった

コブラ科であるイラブー(エラブウミヘビ)の毒はハブの15〜20倍と言われる猛毒であるけれど

おとなしい性格で噛まれた例がないと言う

そして小さな口のせいで奥にある毒牙まで届かないらしい

幼いうちは鮮やかなブルーで

成長とともに茶褐色になる

久高島の神からの贈り物

毎日、朝夕にイラブーをひっくり返し、数日おきに薪の入れ替える作業

そして燻製の期間は一週間だと言う。

小屋の赤瓦の屋根の隙間から立ちこめる煙がどこか神聖に見えて

しばらく見とれてしまった

残念ながらもっとゆっくり見て回りたかったけれど本島へ渡るフェリーの時間が迫っていた

「はんちゃたい」

ここもリクエストしていた場所だ

数少ない男達の神行事「テーラーガーミ」

太陽の力を受けて行う祓い清めの行進の出発地点である

酋長の家でテーラーガーミで謡っている写真を見せてもらった

ここは昔の「畑」だと言う

写真左手前の石は「テンヌジョウ」と呼ばれ、天と地を繋ぐものだと言われている。

昔は稲を植えていたらしい

港へ向う途中の集落で最後に紹介された場所「ウプグイ」

「御殿庭」と並ぶ島の二大祭場の一つで「外間殿」と呼ばれている場所

「ミウプグイミンナカ」と呼ばれる大香炉が置かれており

琉球全体にとっても相当重要なもだと言う。

天、太陽、月、竜宮、国づくり、植物、健康の神様が祀られており

左にある建物は西威王の産屋跡だと言われている。

残念ながら島とさよならする時間が来てしまった

駆け足だったけれど、とても丁寧に島の紹介をしてくれたガイドさんに感謝した

「また来て下さいね」

僕はきっとまた訪れる予感がした

この島には日本人のルーツが残されている

ごった煮のような現代

本来の姿を見失ってはいないか?

人があまりに中心に居座り威張りすぎていないか?

僕がこの島で見て感じたのはほんの一部だろう

でもそのほんの一部のイメージが大きい

所詮僕も外来者だ

だけれど「島の聖域の貝殻やら」を持ち帰る下品な外来者ではなく

日本古来の「自然と共存することへの感謝に満ちた精神」を持ち帰りたい


まだまだ理解する必要があるのだろう

そのときは久高島よ、僕をまた受け入れて欲しい。





さぁ本島へ戻り

歌いに行こう





つづく

KENICHI KIKUCHI "2008 SLOW TRIP Vol.030"