2007.1.8

2007 SLOW TRIP Vol.01 「故郷 : ブラック・ダイアモンド」


「太平洋炭礦」

2002年、1920年から続いた82年の歴史に幕を下ろした。

2002年の閉山時1537人が解雇された。

現在は地元経済界出資会社「釧路コールマイン」が引き継ぎ

再雇用された社員約500人が採炭業務も続けている。

故郷にはこの国最後の炭礦がある。


2007.1.1 元旦

炭礦は、僕の実家から自転車で行けるほどの場所にあり

とくに馴染み深い。

近くのアスレチック場で暗くなるまで遊んだものさ。

まだ炭礦夫として現役のダチに見学をたのんだ。

完全に操業停止している元旦だけの特別な見学さ。

たしか小学生の頃「社会見学」で来た記憶があった。

全盛期の炭礦の見学の記憶が。

この「人車」に乗って1日3交代、地下深くの採掘場まで運ばれてゆくんだ

この顔がえらく気に入ってしまった。

「ブタバナ1号」と勝手に名付けた。

ナビゲーター

想像を超えた狭い椅子に驚く

この窮屈な椅子で真っ暗な地下へ後ろ向きに突入して行くのは怖い。

さらに奥へ

ドーンと暗闇がポッカリ口を開けていた。

空気の流れがここに集中して

冷たい風が坑道へ大量に流れ込み立っていられないほどだった

男の仕事場だった

「ブタバナ1号」のリアも素敵だ

仕事を終えて採掘場から出てきた気分を想像してみた

太陽を見上げたときの気分。

最も危険な職種

それがいつも身近にあった。

今みたいな寒い冬、石炭で暖をとった。

それはあたりまえな暖かさじゃなく貴重な暖かさだったんだ。

救護隊の練習坑道があった。

実際に火災を起こして煙だらけの坑道から救護する訓練をしてるのだそうだ

懐かしい「太平洋炭礦」の社名

見学を終えて、敷地内にある神社で

今年の安全を祈ってきた。

ダチだけじゃなくここで働く全ての人の安全を

敷地内でヒヨドリが綺麗な声で鳴いてた。

ハタチで子供が出来てから

生活のためにとそれまでの職を辞め

ほとんど毎日坑内で採掘を続ける強靱な男

からかうと容赦なくぶん殴ってくる乱暴な男(笑)

新会社以降も、ほんの少しを理由にして解雇は続いていると言う

最後の炭礦もいずれ閉山の運命なのか?

今では、石炭ストーブの家もめずらしい(うちの実家くらい?)

便利で安い石油や電気ストーブの家庭ばかり。

でも、僕は知っている。

石炭ストーブの暖かさを。

石炭ストーブの優しい暖かさを。

においを、炎を。


KENICHI KIKUCHI "2007 SLOW TRIP Vol.01"