storia #26 「 ビッグ・ボーイ・ナウ 」
峠での事故の一件から時が流れた
GTSも完治して調子をようやく取り戻した。
けれど、もう "明日無き暴走" は出来なかった
当然だ、。
その時期はLIVE喫茶で知り合った
ピアノの弾き語りで歌っていたひとつ年上の彼女とつきあっていた。
彼女は古い軽四に乗っていてそれに鍵盤を積んで乗っていた
けれどそろそろ限界が来ていた
ある晴れた日曜日、車選びで一緒にディーラーを巡った
はじめに行ったユーノスのディーラーで
ロードスターを気に入ったようだったけれど
トランクルームに彼女の鍵盤も僕のギターも入らなかった
残念ながらボツ
当時ラリーに参戦していた日産へ向うと
パルサーGTI-Rというホットモデルが発売されたばかりだった
それを彼女気に入ってしまった。
あのタダモノじゃない迫力のボンネットを持つ車に。
ノーマル状態で僕のチューンドGTSより速いのも気に入った理由のひとつかも
ハッチバックを開けると楽器が楽々積めた
雪の多い北海道では4WDがスタックの心配も無くていい
そしてコイツは頑丈に出来ているしある意味安全か。
納車された真っ白なパルサーGTI-Rに彼女は真っ赤なホイールを履かせた。
格好良かったね、かわいかった
さっそく運転をした。
GT-R よりも重いステアリング、クラッチ、やたらと硬派な車だったな
専用チューニングされた4気筒FJの後継SRエンジンもパワフル!
ラリーでの実戦ではシャシーバランスの問題で
捗々しい結果は残せなかったパルサーGTI-R だったけれど、
運転する機会も多かったからか大好きだったな。
彼女もとても可愛がってた。
そんな彼女の新車を眺めていると、
あのいつか運転したBNR32型GT-Rへの思いが込み上げて来た
こう考えるのはどうだろう?
「GT-Rに乗り換えて大人になろう」
「名車に乗る事でやんちゃな走りから卒業出来るだろう」
自分へ言い聞かせるようにそう考えた。
日を追う毎にその思いは強くなった
そしてRSターボを廃車にして途方に暮れていたJJにGTS売却の話をしたんだ
KENICHI KIKUCHI "la mia GT #26"
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