2008.5.2

2008 SLOW TRIP Vol.013 「 亀ヶ岡石器時代遺跡 : 神の姿 」

2008年 SLOW TRIP 母姉妹と春の東北旅行編 #10

2008年4月18日(金曜日) #1

最高の宿と最高のスタッフのもてなしですっかり癒された僕らは蔦温泉旅館から旅立った

残念ながら今日の天気予報は雨

でもまだ空は泣き出してはいなかった

奥入瀬渓流へ戻るのはやめて次の目的地へ車を走らせた

八甲田周遊のルートだ

途中ブナ林の幻想的な世界へ迷い込んだ

思わず外へ飛び出した

立ちこめる靄の中ひときわ神々しい木を見つけた

靄は深まりヘッドライトをつけた

すごい雪だ!

まるで教科書に出てきた東北地方の豪雪地帯の雪だ

いや、ここがそうだっけ

夏になったらこの雪の壁は溶けて無くなるのだろうか

ある意味サーキットのようで楽しかった

豪雪地帯を抜けると「城ヶ倉大橋」にさしかかった

国内最長のアーチ支柱間255m

谷底からの高さは122m

けれどあまりの寒さに母は車から出てこなかった

もったいない

八甲田山を右目に十和田ゴールドラインを走りきり青森市内に入った

本日最初の訪問先

縄文時代の日本最大級の集落遺跡「三内丸山遺跡」に到着

しかし縄文時代と言っても

今から1万2000年前から約2300年前の約1万年の間のことを指すが

その中でも草創期、早期、前期、中期、後期、晩期と6の時代に分けて考えるらしい

ここは前期、中期の遺跡とのこと

イギリスのストーンヘンジやエジプトのクフ王のピラミッドと同時代だ

当時の生活環境が解る膨大な量の縄文土器や石器、木器、土偶、装身具、なども出土

ひょうたん、ごぼう、豆などの栽培植物も出土し栗の栽培も明らかになった場所

数多くの発見で縄文時代のイメージが大きく変わったとある

1992年からの調査で竪穴住居跡、大型竪穴住居跡、大人の墓、子どもの墓、盛土、掘立柱建物跡、

大型掘立柱建物跡、貯蔵穴、粘土採掘坑、捨て場、道路跡などが発見された

集落全体の様子や当時の自然環境などが具体的にわかるようになっという

当時の人たちは相当背が低かったらしく

僕が入って行ける住居は少なかった

雨が今にも降り出しそうで

風も冷たく、それが反ってこの場所の雰囲気を倍増させていた

青森出身の職場仲間がいつも買ってきてくれるリンゴのパイを見つけたのでみんなで食べた

シナモンが利いてていつ食べても美味いね



さぁ、今回の旅で密かにメインにしてた場所、つがる地方へ向おう!

青森県つがる市木造に着いた

母は看板を見て「もくぞう、。」と言ったが

「きづくり」だ。

役場の隣に「つがる市縄文住居展示資料館 カルコ」なる施設があった。

ついに逢えるのであろうか、、。

ドキドキしていると入り口に居た!

「遮光器土偶!!」

んっ? デカイな

本物がこんなところにあるわけない

レプリカだ

入場料210円を支払って中へ入った

おおっ!! もっとデカイ!!

僕よりデカイ木彫りの遮光器土偶が出迎えた


どこだ!?

キョロ、キョロ

!?

これかぁ!

1887年(明治20年) 5月に、ここ亀ヶ岡遺跡から出土した高さ34.5cmの「遮光器土偶」

んっ!?

説明書きを見ると同サイズのレプリカとあった

僕はこの「遮光器土偶」をはじめて見た4歳くらいの時から頭から離れられなかった

縄文時代に何があったのだろうか?

いつもいつも考えてた

今も時々考える

答えの出ないことなので苦しくなるときもある

エスキモーたちが雪目を回避するために用いる遮光器のような形状をしているからこの名だけれど

なんなのだろうこの目は!?

宇宙との交流があったのか?

多くの学者の考えは当時のシャーマン(霊能者)が想像した神の形ではと言う

そして女性だ

当時の服装? 模様も魅力的だ

土偶は完全な形で発見されるのは珍しく殆どがこのように

手、足、頭などが欠けている状態で見つかる

これは多産や豊穣を祈願するための祈祷、儀式において

土偶の体の一部を切断したのではないかと言う説がある


どうだろ?

土偶には少年を悩ますには十分な魅力があるとは思わないだろうか

2階の展示室へ上がった

亀ヶ岡遺跡で出土されたものの展示があった

この土偶も足が切断され目は遮光器のようだ

これもだ。これはカラダ全体の模様がなんとも魅力的だ

この展示室にあったイスとテーブル

見るもの全てが謎を深めてくれる

深まる謎を抱えたままJR木造駅まで来た

!?

遮光器土偶駅だ!

両足があったら間違いなく歩き出しただろうな

駅内にはこれといった資料もなかった

いったいどこへ行けばよいのだろうか

亀ヶ岡遺跡なのだから

木造の中で亀ヶ岡と呼ばれる地域へ行かなければダメでしょう

亀ヶ岡にある「縄文館」という施設にやって来た

丘の上にあるなんともひっそりとした地味な場所だったけれど

さっそく「亀ヶ岡焼き」の遮光器土偶に迎えられた

ここにも出土品の展示があった

これは人の形だなぁ

当時の服装も想像出来るね

右下の顔がなんとも気になる

見事に切断されている

これも頭部が切断されていた

ん!? そうかやはり本物は東京か

上野の国立博物館平成館にあるのか

行かねば

お土産品実物大「遮光器土偶」10,000円

型焼きだなぁ、イマイチ

おおっ! これは素晴らしい!

150,000円 ! 価値は十分に有り

何々、亀ヶ岡在住の作家の作品、ギャラリー工房が近く、、行かねば!


Photo by  KAYOKO MIYASHITA

途中「しゃこちゃん広場」と呼ばれる遺跡のモニュメントがある場所へ寄った

ついに「遮光器土偶」が出土した場所までやってきたんだなぁ

思えばもう少し北上したら本州の最北端じゃないか

北海道がすぐそばだよ

今回の旅ずいぶん遠くへ来たもんだなぁ

亀ヶ岡在住の陶芸家のギャラリー工房「しきろ庵」へ訪問した

遮光器土偶のレプリカの完成度も素晴らしいが

数々の陶器作品がどれも魅力的だった

縄文時代を彷彿とさせる生き生きした模様が忘れられない

ごちそうになったお茶も美味しかった

話を伺うと遮光器土偶をオーダーする方はマニアックな方が多く

足を出土品のように切断してとか元の姿のままとか

細かな相談の後に制作に入ります、と笑っていた

とてもきさくなアーティストだった

夢と言えば「未来」を指す事が多いけれど

太古に夢を膨らます、昔少年だった男のお話でした



つづく

KENICHI KIKUCHI "2008 SLOW TRIP Vol.013"