2007.6.24

2007 SLOW TRIP Vol.019 「 蒲生干潟 : LIVE ON 」


その日僕が見たのは雫の中に閉じこめられた逆さまの世界

それは一瞬で弾けては次から次にまた生まれた


2007.6.23

朝6:00に「蒲生干潟」へ着いたというのに

早起きサーファー達でもう満車だった

養鯉場方面への道は随分生い茂っていた

朝露にまみれてジーンズがビショビショに濡れた

足下ゴソゴソ、クロベンケイガニたちいっぱい

隠れているつもりでも立派なハサミが目立ちすぎるかな

ハマヒルガオが朝陽を浴びてラッパを吹いていた

そこで顔出しているのは誰だい?

珍しいね クロハラアジサシ

ベッドで眠り続ける朝、待ちきれなかった朝陽を喜ぶ朝

おっボクの大好きなモズがいたぞ

朝から難しいこと考えているのかい?

モズの雌は眼のラインが薄くて優しい顔

養鯉場に注ぐ水道でマイナスイオンいっぱい浴びた

溢れ出る水が生きてるみたいでしばらく見とれていた

雫の中に僕らの世界が逆さまに収まっていて

からかわれているようで可笑しくなった

たかだか水道水の中に必要なモノ全てを見た気がした

生き続ける力?

その上で、今年生まれたてのムクドリの幼鳥が

世界を確認してた

ただでさえ声の大きいカラスが拡声器を使ってまで何を叫びたい?

それぞれのイキモノにそれぞれの朝

潮干狩り?

足下にアカテガニがいた

よくみると甲羅もクロベンケイガニとはちょっと違うね

ここはクロベンケイガニが一番多いな

甲羅を見ると弁慶の厳つい顔のように見えるからこの名

紫色っぽくて足の毛が特徴かな

サヨウナラ〜!

こちらはアシハラガニ

たくさんの彼らの巣穴を見つけたよ

ベンケイガニよりかわいい顔

眼だけ水上にひょっこり出してた

カニらしいって何かわからないけれど

ボクの頭に想像するカニに近いカニのカタチ

いつもここにはゴッソリいる

今日のアワアワ一等賞はこのコに決定

なんとも

自然に生きる姿は美しい

戻り道クロベンケイガニにまた出合った

砂浜側に来た

コサギがはしゃいでた

「魚がいっぱいだ!」

「うわ〜い!」

実に楽しそうだ

浅瀬をのぞくと稚魚たちがいっぱい泳いでいた

大きい魚もピッチピチ跳ねていてそのたび波紋が出来てた

ここは鳥にとってもカニにとっても魚にとっても虫にとっても

もちろん人間にとっても天国

こんな条件が揃ったところってもう少ないのだろう


なんでも人間中心に考えるのはもうよそう

そもそも「害虫」「益虫」なんて言葉は

なんて都合のよいひどい呼び名だろう

雫の中の逆さまの世界

その中では全てが逆さまだった

でもそこでは人間は「害」扱いされていなく平等だったんだから


2007 SLOW TRIP Vol.019 「 蒲生干潟 : LIVE ON 」


KENICHI KIKUCHI "2007 SLOW TRIP Vol.019"